| Home | News | Education | Research Community | MF www sites| |

山本さんは明治39年秋田県能代川の河畔の生まれ。 幼い頃から魚に対する興味が深かった。 東大に入り、卒業以来ほとんどメダカと生活を共にして生涯を終ったといえる。 最初の研究テーマは、メダカの初期胚にみられるリズミックな収縮についてである。
ここでちょっとメダカの発生の図をお目にかけよう(図1-6)。 メダカに限らず、発生学の研究によく使われるニワトリ、トノサマガエル、バフンウニなどでは、正常発生の様子がわかるように、発生のいろいろの段階の正確な図がかかれている。 メダカでも何人かによって図がかかれているが、ここには代表的な松井喜三さんによるものを示す。

問題の収縮はこの図の15の頃にみられるもので、まだ筋肉はまったくできていないのにある速さで収縮運動がおこり、水温をあげると運動は速くなる。 おそらくこれは、胚のなかにある卵黄を吸収したりするのに役立つことなどを山本さんは示した。 メダカの卵は受精すると間もなく、一層透明に見えるようになる。 これは表面にある小さな表層胞と呼ぶ構造が、精子の入った部位から順にこわれはじめ、卵の全表面に及ぶ結果である。 実は受精の際に始まるこの変化は、後にいろいろの動物についても詳しく研究された重要な現象である。 山本さんはメダカ卵で、精子の侵入部位から発して波のように卵細砲の表面を伝わるこの本体を研究し、細胞生理学の分野で高い評価を受けている。
昭和17年名古屋帝国大学に理学部ができると共に、そこでメダカを使う研究を始めた途端、戦争で疎開を余儀なくされるなどの苦労に克って、戦後新しく性分化の研究に立ち上った。
ここで曾田さんの研究が基盤となる。 つまり、X染色体の上に劣性のr遺伝子を、Y染色体の上にはR遺伝子をもち、遺伝的な雌は常にシロメダカに、雄はヒメダカになる系統を使った。 動物が雌になるか雄になるかは、親から来た性染色体の組み合わせが受精の瞬間に決まり、それに従う。 このことは教科書的事実とされてきたが、山本さんは孵化したばかりのメダカの稚魚の飼料のなかに女性ホルモン物質を混ぜて与えると、遺伝的には雄であるべきヒメダカが雌として発育し、立派に卵を産むことができることを発見した。 その後逆に男性ホルモン物質の適当な量を与えると、遺伝的な雌が雄になることもつきとめた。
結果だけを知ると何でもないようだが、これもコロンブスの卵と同じで、当時としては画期的な実験であった。 もちろん、脊椎動物の外形や第二次性徴が性ホルモンによって支配されることはよく知られていたが、性の分化そのものが簡単に転換することは意外と思われた。 このことはその後いろいろの魚などで追認され、今日ではバイオ技術の一つとして養殖にも利用されている。
これらの研究は実に根気と丹念さによって行われた。 長い世代にわたるメダカを自ら多数飼育し、特に春から夏にかけての繁殖季節には、屋外の飼育場所で長時間の作業をつづけていた。 これらの業績に対し、日本学士院賞が与えられたほか、多くの賞に輝いている。