Tatuo AIDA

会田龍雄先生


江上信雄「メダカに学ぶ生物学」(中公新書)より

しかしながら、真に独創性があり、興味深い研究はその5年後(1921年)に会田龍雄さんによて英文で発表され、世界の学界で注目された。会田さんは1913年以来京都の自宅の庭に池をつくり、40個ほどの水鉢を使って精密な交配実験をくりかえし、8年かかって、野生型とヒメダカについては外山・石原さんらと同じ結果を得たが、シロメダカについては、限性遺伝と呼ぶ、当時まだ知られていない現象を明らかにしたのである。

 会田さんは京都に生まれたが、東大理学部動物学科を卒業し、最初のうちは海産のヤムシの分類や発生を研究し、一時熊本の第五高等学校の教授になり、当時は夏目漱石の同僚であったが、後京都に戻ってメダカを材料とした実験を行った。繁殖季節には朝4時に起き、中国の青島産の鶏卵を主材料としてすり餌をつくり、自ら飼育に精を出していた。また剣道の達人でもあった。

 さて限性遺伝の特色は、ヒメダカからシロメダカを区別する遺伝子 r は劣性で、性染色体のうちX に、これに対し優性の R は黄色色素胞を形成する遺伝子で、普通Y染色体上にある。その結果シロメダカは常に雌にだけ出現する。このようにY染色体に優性遺伝子のある例は、その後にグッピーで発見されただけであり、当時としては新しい発見であった。ショウジョウバエの伴性遺伝とはその様式が異なって見えるので、注目を集めた。特にY染色体は遺伝子を含まないとする当時の常識を打ち破るものであった。そのほか、黒斑の遺伝や、性決定に関する説などメダカの遺伝についての研究成果をあげ、1932年に帝国学士院賞を受賞した。


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